2013年5月28日火曜日

誰に集中するか?

協力が不可欠なのは誰か、協力を得られれば良い程度なのは誰か、反対されても気にする必要のないのは誰かを、よく見定めるのだ。そして、影響をおよぼさなければならない相手や部門・組織にエネルギーを集中する。(コーエン&ブラッドフォード『続・影響力の法則 〜ステークホルダーを動かす戦術』税務経理協会)

    何か変化を起こそうとするとき、組織の中で重要な役割をになっている人を見極める必要がありますね。そのような、キーパーソンに影響を及ぼし味方につけられれば、あなたの影響力も高まります。でも、実際はそれ以外の人たちの反応が気になって回り道しがちです。

   ある若いリーダーは、彼が担当するプロジェクトに意見を述べる先輩たちに振り回され、肝心な何人かの幹部と話し合うのが遅れた結果、のちのち苦労を強いられたとこぼしていました。
   先輩の進言を聞かないのは勇気がいると思いますが、できないわけではありません。重要なステークホルダーに定期的に状況を報告していたため、いざというときに支援を得られたというマネジャーの話も聞きます。

   重要な活動にエネルギーを投入するというのは、それ以外の活動を後回しにすることでもあります。決断しなければならないこともあります。

2013年5月26日日曜日

依存への抵抗

成人の大半は依存している状態を好まず、依存から抜けようとする傾向がある。そのため、上司が部下を依存状態にすれば、あらゆる手段を尽くして反発する。(コーエン&ブラッドフォード『Power Up 責任共有のリーダーシップ』税務経理協会p168)

   「従業員の主体性を高めたい」「指示待ちを変えたい」とおっしゃる人事の責任者に、しばしばお目にかかります。これはほとんどの場合、上司の態度に起因するものと思います。指示を待つ、ということは、それだけ指示が多いのですし、主体的でないということは、それだけ支配的なのです。部下は上司の期待に応えているわけです。

   でも、好んで依存しているとは限りません。指示待ちも、積極的な発言がない会議も、むしろ依存状態からの逃避、静かな抵抗かもしれません。多くはそうだ、と本書には述べられています。したがって、抵抗に反応するのは得策ではありません。管理を強化したり、細かい指示を増やすと、部下はますます上司の期待に応えて依存的になってしまうからです。

   ではどうするか。抵抗への効果的な対応は、相手の本音に耳を傾けることです。抵抗する相手は、たいがい表現が下手なので、態度で不満を示してしまう。そこで、きちんと表現させる。

   上司が部下の話しに耳を傾けるのは、なにも親身になることが目的ではなく、表現すれば問題が解決すると学ばせる、そうして、問題解決に関われれば、依存状態から抜け出せると学ばせることです。結果、彼らの主体性が高まった、と実感できるでしょう。

2013年5月20日月曜日

カレンシーの交換の入り口

文句や反論にあっても、それを相手がどうしようもない人間だという証拠だと考えてはいけない。抵抗を受けると、相手の性格のせいだと決めつけたくなる。しかし、相手は全く異なった基準で業績が評価されるのかもしれないし、異なった目標を背負っているかもしれないのだ。または、あなたの知らないプレッシャーに喘いでいる可能性もある。(コーエン&ブラッドフォード『続 影響力の法則 ステークホルダーを動かす戦術』税務経理協会p50)

  私たちの依頼に何かと不満を述べるなど快く対応しない同僚であっても、その同僚の力を必要とするなら、相手を知らなければなりません。

  ヒントは、彼らが口にする言葉の中に見つかることが少なくありません。不満に耳を傾けると、繰り返し同じ言葉を口にしていることもあります。例えば「納期」「上司」「現場」などです。こういった言葉には、彼らの優先順位、懸念、疑問が隠されていることがしばしばです。「納期」というのは、「納期を守れないと、リリースに間に合わない。彼はそれがいかに重要かわかっているだろうか?」という懸念かもしれません。「上司』には、「上司の期待に応えたいが、上司は認めるだろうか?」かもしれません。
  ところが私たちは、自分があまり考えることがない疑問には、思いが至りません。その結果、明らかに口にされているキーワードを聴き逃してしまうのです。それはあまりにも惜しい。

  ではどうしたらよいでしょうか。これには、反論や抵抗をチャンスと思って、言葉のひとつひとつに耳を傾けるしかありません。自分が考えもしないことを相手が言っている時こそ、ヒントがあるのです。そして、質問してみましょう。「何か具体的な例を話していただけますか?」「現場の理解を得るには、何があったらよいと思いますか?」などです。質問しながら、あなたが相手を理解している、と相手に感じられるようになると、相手はこちらの目標達成を助ける余裕が出てきます。ここでようやくカレンシーの交換の入り口に立つわけです。

2013年5月15日水曜日

影響力の総量を増大する

 言うまでもなく、影響力は形のある、固定的な物質ではない。可変である。経済活動における資本を考えると良いだろう。活かせば活かすほど、投資すれば投資するほど、資本は増大する。同様に、影響力も活かせば活かすほど大きくなり、組織の総合力は増大する。(コーエン&ブラッドフォード『Power Up 責任共有のリーダーシップ』税務経理協会p169)

   親しい友人のことを考えると、初めてあった時から今日に至るまで、いろいろなことがあったなと思い起こします。ともに難しい局面を乗り越えても来ました。難局を切り抜ければ結束も固まります。気がつくと、相手に対する信頼も強固なものになっています。


   影響力は互いにカレンシーが交換されていく状態です。小さなカレンシーの交換から始まることが多いでしょうが、リスクを冒して大きなカレンシーを交換する。たとえば、相手が抱える問題を指摘して解決に手を貸す。無理難題を要求する代わりに、こちらも相手の目標達成を手助けする。


   先日放送された、NHKスペシャル「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオⅡ 第1回 ニッポンの会社をこう変えろで、自動車メーカーマツダのプロジェクトチームの取り組みが紹介されていました。生産部門と開発部門で新型車開発に臨んでいる。開発部門のリーダーは、新素材を使って性能を高めたい。そのように生産部門のリーダーに要請します。しかし、新素材は加工が難しい。そこで、生産部門のリーダーは、加工しやすい設計に変更するよう要求します。これまでは、互いに遠慮して相手の仕事のことに口出ししなかった。でも、遠慮なく意見を述べ合うと、問題解決が進んでいくのです。その結果、世界でもトップレベルの品質を低価格で実現することに成功したと。


   これが、交換の一例です。

2013年5月12日日曜日

うまくいかない時こそ

相手がこちらの期待に反してばかりだと、うまく進まないのは相手のせいだと思いたくなる。しかし、そういうときこそ、自分自身の態度・行動を振り返ってチェックする必要がある。(コーエン&ブラッドフォード『影響力の法則 現代組織を生き抜くバイブル』税務経理協会p161)

  上司が問題をわかっていない、協力的でない、と嘆いているマネジャーの方に、よくよく話を聞いてみると、日頃から上司のいうことに否定的な言動をとっていることが多いと思います。そのようなマネジャーには、これまでの好業績を背景に昇進した方が目立ちます。それだけに、彼らがいうことは正しいように思えます。


  でも、上司の立場で考えてみましょう。部下がこれまでの経験を振りかざし、自分に否定的な態度を示してきたら、そのような部下を警戒するのではないでしょうか。ただでさえ、実績がある部下は、自分の身を危うくする脅威なのですから。


  良い結果を求めるのなら、上司に不愉快な思いをさせないようにして、そのうえであなたが達成したいことに協力を求めるべきでしょう。

2013年5月8日水曜日

双方向の影響力

 リーダーとメンバーの双方から、信頼関係と相互影響を規範とする環境を築きたい。そういった環境では、リーダーは、メンバーがなんのアイデアも提案せず、自分の案への意見を出さない会議を心配する必要がなくなる。(コーエン&ブラッドフォード『Power Up 責任共有のリーダーシップ』税務経理協会p190)

「影響力とは、リーダーが発揮するものだ」と思われています。たしかにそうなのですが、それだけでは不十分です。現実には、メンバーからの影響力は重要な役割を果たしているからです。例えば、メンバーが現場の情報を提供し、意思決定がなされるなどです。リーダーとメンバーが双方向に影響力を発揮できる信頼関係が重要です。そうすれば、メンバーはもっと事業に貢献すること、間違いありません。

2013年5月6日月曜日

建設的な緊張感を保つ

 ビジョンは、向かうべき方向を示し、さらに、それを実現するにはやらなければならないことがあるという、ある種の建設的な緊張感を創り出す。この緊張感がなければ、行動は起きない。(コーエン&ブラッドフォード『続 影響力の法則 ステークホルダーを動かす戦術』税務経理協会p83)

 チームに緊張感がないと、いわゆる”仲良しクラブ”になってしまうようです。問題の本質に迫ることなく、どこか妥協が出てしまう。そうして失敗してしまうプロジェクトやチームは少なくない気がします。

 やむにやまれぬ思いがあって、課題に取り組んでいければ、思いもよらない知恵が発揮されるかもしれません。現実をしっかり受け止めること、望ましい姿を理解すること、その差が明確になることが、緊張感を共有するのに欠かせません。痛いところを衝いてくれる(本当のことを指摘してくれる)メンバーも欠かせませんね。

2013年5月3日金曜日

ヒロイズムの誘惑

 英雄志向のリーダーシップは、組織が卓越した成果を上げる際の障害になるにもかかわらず、心情的には心地がよい。ゆえに手放しにくいのが問題だ。(コーエン&ブラッドフォード『Power Up 責任共有のリーダーシップ』税務経理協会p43)

 自分のほうが他者より知っている、という感覚は心地良いのです。子供から大人まで、自分の知っていることを得意げに話したがります。でも、気をつけなければなりません。リーダーのほうが知っていると思えば、メンバーはリーダーに依存したくなるからです。主体的な判断を避け、リーダーの決定に従っていたほうが、メンバーには安全で合理的です。結果として、自分の力を発揮しないということに・・・。
 リーダーの役割をとるのなら、知識をひけらかさないほうがよいこともあるのですね。