2013年7月24日水曜日

否定的な価値の交換

先述の通り、価値の交換には前向きなものと後ろ向きなものがある。建設的な価値の交換は「あなたの利益になることをしますから、私にも利益になることをしてください」である。対して「あなたがしてくれないのなら、私もあなたのためになることをしません」た、否定的な価値の交換である。(コーエン&ブラッドフォード『影響力の法則 現代社会を生き抜くバイブル』税務経理協会p31)

   うまくいかない相手との場当たり的な交換は、自然に否定的な交換の繰り返しに行き着きます。そうすれば、一時的にはこちらが勝利しても、結果的に双方に不利益をもたらすことになってしまいます。ある若いマネジャーは、ベテランの部下を使いあぐねていました。なかなか指示に従わない。会社への不平を若手社員に吹聴する。チーム全体の士気が下がってしまう、そのベテランが原因になっているようです。マネジャーはその時のいらだちを説明してくれました。「私は、いかにして相手を操作するかに夢中になっていました。でも、それでうまくいくことはありませんでした」
   この流れを変えるには、否定的な価値の交換を止めなければなりません。そもそも、否定的な交換が行われていることを認識しなければなりません。

2013年6月18日火曜日

よい結果を求めるほうが影響力は高まる

自分がすべきことではないという理由で、相手が協力しやすい方法を使うのを嫌がり、自らの影響力を損なう人がいる。彼らの考えではこうだ。「同僚が動くのは、私の依頼内容が正しいという理由で動くのでなければならない。私から相手を動かそうとすべきではない」(コーエン&ブラッドフォード『影響力の法則 現代組織を生き抜くバイブル』税務経理協会p77)

    ある人事部門のマネジャーの方で、自分のサービスが正しいのだから、従業員は私の指示に従うべきだ、という強い信念を持っている方がいました。彼は、自分のデスクから決して動こうとせず、せっせと部下や現場に指示を出していました。しかし、いずれの施策も効果を上げられません。彼の態度が尊大であると現場で嫌われていたのです。それに気づかず、彼はいつも苛立っていました。
    以前はこういう方が管理部門にはしばしば見受けられました。最近は、管理部門の役割が変わってきており、このようなマネジャーは減ったかもしれません。でも、自分の方が相手よりも上だと考えると、似たような態度をとる人はまだまだ多く見られます。例えば、上司や専門家には、少なからず見かけます。

    本当に求められているのは必要な結果を出すことなのか、自分の正しさの証明なのか、よく考えなければいけません。答えは明らかで、目標を果たし求める結果を出すことです。結果を出すためなら先に動くこと、カレンシーの交換をこちらから仕掛けるのが、結局近道というわけです。

2013年6月10日月曜日

メンバーはリーダーの心を読もうとする

コミュニケーションは常に複雑である。しかも、権限と階層がかかわると、一層誤解しやすくなる。(中略)この経験を積むと、上司の言葉に先入観を抱くようになる。そして、気軽な上司の提案を命令と誤解したり、たいした意味のない仕草から期待を読み取ろうとしてしまうのだ。(コーエン&ブラッドフォード『Power Up 責任共有のリーダーシップ』税務経理協会p176)


   リーダーのささいな一言が、メンバーには気になり、過剰反応することもしばしばあるでしょう。そうして、リーダーは知らず知らずのうちに部下に無駄な時間とエネルギーを消費させてしまうのです。
   新しい郊外のオフィスを視察した幹部が、「ここにヤシの木でもあったら、最高の景色だね」と口にしました。本人は軽い気持ちで言ったのですが、次に来たときは本当にヤシの木の並木になっていた。本書にこんな笑い話があります。他人ごとじゃないですよねえ。
   では、リーダーが言葉に気をつければよいか、というとそういう問題ではないと思います。メンバー側の「リーダーの顔色をうかがっていらないことまで反応してしまう」ということのほうが問題です。そんな彼らは、決まって言うのです。「でも、部長はいいといったじゃないですか」と。

   メンバーの主体性、判断力、責任感を育てない限り、リーダーは苦しむでしょう。そして、組織の力は十分に発揮できない状態が続いていくわけです。

2013年6月9日日曜日

伝統工芸的組織

   先日、ある自動車メーカーの汎用エンジンの開発技術者の方とお話しました。汎用エンジンというのは、モーターボートの動力や発電機などを指します。こういうエンジニアの方とお話するのは楽しい。製品に対する思い入れが感じられるからです。

   市場の動向など、いくらか会話を交わしたあと、「製品開発のプロジェクトは大変じゃありませんか?」と尋ねてみました。すると、この人は何を聞くんだろう、という表情。そこで「いえ、プロジェクトにはいろいろな部門から、様々なバックグラウンドの人達が入ってくるので、すり合わせが大変だと言いますよね」と付け加えると、その若いエンジニアは、私の質問の意味がわかったらしく笑いながら「それは、4輪は大変ですよ」と答えてくれました。「4輪(乗用車)は、何百人も関わりますからね、会社の経営に大きな影響を及ぼします。みんな大変だって言ってますねえ」という。「でも、私がやっている仕事は、もっと簡単なんですよ。モデルチェンジのサイクルが長いし、競合も少ないし。そのうえ、同じメンバー数人で何年もやっていて、お互い気心知れていますから、ずっとラクなんですよ」

   確かに、変化が少なく比較的単純なプロジェクトでは、経験者のほうが業界、技術のことをよく知っています。ですから、リーダー→メンバーの上意下達で多くの状況を動かすことができ、チームとしての機能はそれほど必要ないと言われています。典型的な例は、伝統工芸や伝統芸能です。師匠の仕事を再現するのが弟子の役目です。
   一方、複雑な製品を開発している、変化が早い市場を相手にしている、競争が厳しい、といった条件下では、リーダーはメンバーの技術、情報、コミットメントに頼らなければなりません。自動車開発のプロジェクトリーダーのほとんどが40代で機械工学専攻、メンバーの多くはエレクトロニクス専攻なのが一例です。自動車に興味が無い若者もメンバーに紛れ込んでいますが、彼らの能力が発揮されないと、自動車のような3万点と言われる膨大な部品からなりたつ製品は完成しません。このような条件下では、チームリーダーシップなくして事業は成り立ちません。

   さて、自分が関わる事業は、比較的単純な製品を扱う、競合が厳しくなく変化が少ないか、あるいは、製品が高度に進化している、競合が厳しい、変化が激しいなどが見られるか。多くの事業は、伝統工芸ではいられないと思うのですが、いかがでしょうか。

2013年5月28日火曜日

誰に集中するか?

協力が不可欠なのは誰か、協力を得られれば良い程度なのは誰か、反対されても気にする必要のないのは誰かを、よく見定めるのだ。そして、影響をおよぼさなければならない相手や部門・組織にエネルギーを集中する。(コーエン&ブラッドフォード『続・影響力の法則 〜ステークホルダーを動かす戦術』税務経理協会)

    何か変化を起こそうとするとき、組織の中で重要な役割をになっている人を見極める必要がありますね。そのような、キーパーソンに影響を及ぼし味方につけられれば、あなたの影響力も高まります。でも、実際はそれ以外の人たちの反応が気になって回り道しがちです。

   ある若いリーダーは、彼が担当するプロジェクトに意見を述べる先輩たちに振り回され、肝心な何人かの幹部と話し合うのが遅れた結果、のちのち苦労を強いられたとこぼしていました。
   先輩の進言を聞かないのは勇気がいると思いますが、できないわけではありません。重要なステークホルダーに定期的に状況を報告していたため、いざというときに支援を得られたというマネジャーの話も聞きます。

   重要な活動にエネルギーを投入するというのは、それ以外の活動を後回しにすることでもあります。決断しなければならないこともあります。

2013年5月26日日曜日

依存への抵抗

成人の大半は依存している状態を好まず、依存から抜けようとする傾向がある。そのため、上司が部下を依存状態にすれば、あらゆる手段を尽くして反発する。(コーエン&ブラッドフォード『Power Up 責任共有のリーダーシップ』税務経理協会p168)

   「従業員の主体性を高めたい」「指示待ちを変えたい」とおっしゃる人事の責任者に、しばしばお目にかかります。これはほとんどの場合、上司の態度に起因するものと思います。指示を待つ、ということは、それだけ指示が多いのですし、主体的でないということは、それだけ支配的なのです。部下は上司の期待に応えているわけです。

   でも、好んで依存しているとは限りません。指示待ちも、積極的な発言がない会議も、むしろ依存状態からの逃避、静かな抵抗かもしれません。多くはそうだ、と本書には述べられています。したがって、抵抗に反応するのは得策ではありません。管理を強化したり、細かい指示を増やすと、部下はますます上司の期待に応えて依存的になってしまうからです。

   ではどうするか。抵抗への効果的な対応は、相手の本音に耳を傾けることです。抵抗する相手は、たいがい表現が下手なので、態度で不満を示してしまう。そこで、きちんと表現させる。

   上司が部下の話しに耳を傾けるのは、なにも親身になることが目的ではなく、表現すれば問題が解決すると学ばせる、そうして、問題解決に関われれば、依存状態から抜け出せると学ばせることです。結果、彼らの主体性が高まった、と実感できるでしょう。

2013年5月20日月曜日

カレンシーの交換の入り口

文句や反論にあっても、それを相手がどうしようもない人間だという証拠だと考えてはいけない。抵抗を受けると、相手の性格のせいだと決めつけたくなる。しかし、相手は全く異なった基準で業績が評価されるのかもしれないし、異なった目標を背負っているかもしれないのだ。または、あなたの知らないプレッシャーに喘いでいる可能性もある。(コーエン&ブラッドフォード『続 影響力の法則 ステークホルダーを動かす戦術』税務経理協会p50)

  私たちの依頼に何かと不満を述べるなど快く対応しない同僚であっても、その同僚の力を必要とするなら、相手を知らなければなりません。

  ヒントは、彼らが口にする言葉の中に見つかることが少なくありません。不満に耳を傾けると、繰り返し同じ言葉を口にしていることもあります。例えば「納期」「上司」「現場」などです。こういった言葉には、彼らの優先順位、懸念、疑問が隠されていることがしばしばです。「納期」というのは、「納期を守れないと、リリースに間に合わない。彼はそれがいかに重要かわかっているだろうか?」という懸念かもしれません。「上司』には、「上司の期待に応えたいが、上司は認めるだろうか?」かもしれません。
  ところが私たちは、自分があまり考えることがない疑問には、思いが至りません。その結果、明らかに口にされているキーワードを聴き逃してしまうのです。それはあまりにも惜しい。

  ではどうしたらよいでしょうか。これには、反論や抵抗をチャンスと思って、言葉のひとつひとつに耳を傾けるしかありません。自分が考えもしないことを相手が言っている時こそ、ヒントがあるのです。そして、質問してみましょう。「何か具体的な例を話していただけますか?」「現場の理解を得るには、何があったらよいと思いますか?」などです。質問しながら、あなたが相手を理解している、と相手に感じられるようになると、相手はこちらの目標達成を助ける余裕が出てきます。ここでようやくカレンシーの交換の入り口に立つわけです。