2015年9月2日水曜日

相手に届いているか

 ここ数年、口をほとんど開けないで話す若者が気になります。発声不明瞭なので、話の中身がわからないだけでなく、日本語かどうかもわからない。それで会話が成り立っているのか心配になるのですが、大丈夫なんでしょうか?

 それが、先日はある管理職の方と話していて、同じように感じました。若者だけのことではないようなんです。

 「私は部下を認めている」「いい仕事ぶりは、褒めている」という方が、これ以上何をしろというんだ、言うのです。でも、多面評価の結果を見ると、部下は認められていると思っていません。それで、その管理職の方と話していてふと思ったのが、「これは届いていないな」ということです。なぜなら、この方、発声が不明瞭なんです。

 「カレンシー」は、相手に届かなければカレンシー(価値)になりませんよ。相手が受け取ったことを確認しなければ、売りっぱなしの製品と同じです。

 はっきり伝わる声で、相手の目を見て話しましょう。そして、部下の反応を確認してください。それだけで変わるかもしれませんよ、とお伝えしました。もちろん目を見て。

2015年8月28日金曜日

顧客の声

 京都に出張するといつも使うホテル。全国チェーンのビジネスホテルです。この八条口のホテル、気に入っています。

 というのは、最近いい部屋を用意してくれるのです。上階だとか広い部屋だとか、アップグレードしてくれる。部屋が快適だと気分はいいし、仕事もはかどります。でも、なぜかな。

 実は、一つ心当たりがあります。

 それは、数ヶ月前にこのホテルに宿泊した際、とても対応が良かった。それを、「お客様の声 支配人あて」(よく客室に備えられている調査用紙です)に書いて、チェックアウト時にフロントに提出したのです。「いい対応だった。また泊まりたい」と。それが効いているのかもしれません。

 だとしたら、楽しい「交換」だなと思って、ちょっと愉快な気分で過ごしました。

掃除道

 自動車用品販売「イエローハット」の創業者、鍵山秀三郎氏は、独自の清掃活動でも知られています。

 その鍵山氏の講演録『凡事徹底』(1994 致知出版)に、こんなエピソードがありました。

 毎日、会社とその周辺を箒と塵取りで掃除していた。そのうち、望んでいたわけではないのだが、お礼の品が届くようになった。都心の一等地のビルは、そうしてある方から譲り受けたものだ。

 すごい“交換”ですよね!

2015年8月18日火曜日

アドバイスを求める

 最近自転車に乗り始めています。20年ぶりぐらいでしょうか。まだ新しい自転車にも慣れるのに精一杯ですが、風を切る爽快感は格別ですね。

 私がお世話になっている自転車店の若い店主は、なかなか魅力的な若者です。彼に後押しされて始めたところも多分にあります。

 その彼に、「今度社用車を買おうと思っている。タカシマさんは自動車業界だから(正しくは元)よく知ってるでしょう、お勧めはないですか?」と尋ねられました。

 ほう、この店もクルマを持つんだ。自転車ライフを提案する店だから、ライフスタイルを想像できるようなクルマがいいんじゃないかなと思い、いくつかアイデアを伝えました。

 これが実はなかなか楽しい。私は元業界人だから、この分野はちょっと得意としています。自動車販売員の商品知識教育を担当していたので、他者の製品も含めていろいろ調べました。それ以来クルマの情報は蓄えられています。その得意分野が活きるのです。加えて、新しい店の発展に、客としてちょっとは貢献できるような気がする。

 彼も真剣に聞いてくれて、参考になりました、と別れた後は、自転車漕ぎながら少しいい気分になりました。相談されたことが、私にはカレンシーになったようです。
 
 相手が得意な話は聞いてみる。それで、参画意識も感じられるかもしれない。

 あなたも、部下や上司、友人に、彼らが得意とする何かを聞いてみたらいかがですか?


2015年8月15日土曜日

ならぬ堪忍、するが堪忍

 京都の心学修正舎は、石田梅岩の弟子、手島堵庵以来の心学講社です。この講社では、毎月1回石門心学を学ぶ会「会輔」が行われており、名門商家の京町屋で開催される会輔に、私もこの春からときどき参加しています。

 初めて参加した時、講師の後藤一成先生が「あれを見てください。「堪忍」と書いてある」という先を見ると、鴨居に額があり「堪忍」とあります。
  「これは、商家がお客に『どうかそれ以上は無理を言わないでください。堪忍』、という意味で掲げています。だからお客の方を向いている。これが京都らしいものなんですよ。面白いでしょう」と言われる。
 これが、東京や大阪だと、お客に何を言われても我慢しよう、と自分の方に「堪忍」を向けて自分に言い聞かせるだろう、とおっしゃるのです。確かにそうかもしれません。東京人が、ひとり脂汗を流しながら、相手の無理難題に我慢する姿が思い浮かびます。京都では、我慢しないのでしょうか。おもしろい。だとしたら、相手に堪忍を求めるのは、長く取引を続ける上で、重要な商人の知恵だったに違いありません。

 「ならぬ堪忍、するが堪忍」は石門心学を広めた江戸中期の心学者、中沢道二の言葉です。堪忍とは困難を堪え忍ぶこと。「ならぬ堪忍、するが堪忍」には、本当に堪えられないと思うことを堪忍するのが、本当の堪忍ですよ、という意味があります。

 これを、「カレンシーの交換」で考えてみると、こちらもギリギリだけど、相手も苦しい。だから、最後のところで相手を追い詰めてはいけない。堪忍してやって、相手に逃げ道を残すことが、カレンシーとなる、ということです。相手は、逃がしてくれたと思うからです。その結果、取引(交換)の継続になる。一般的には、相手はなにか駆け引きをしているのではないか、と疑心暗鬼になりがちなのを、堪忍が働いていると認識することで乗り越えているようです。

 おそらく、京都の商人には、「お互いにギリギリまで努力している、そのうえで最後は堪忍してくれる」という暗黙のルールがあって、その信頼関係を取引の基盤にしてきたのでしょう。

 「堪忍」は、それ自体が「カレンシー」として機能しているのですね。
 今日は、終戦記念日。堪忍による平和と繁栄を思いました。

2015年3月3日火曜日

サム・ウォルトンの10カ条

   サム・ウォルトンは、「ウォルマート」の創業者です。すでに、1992年に73歳で他界しており、私には伝説の人物という印象です。「ウォルマート」社は世界最大の小売業者で、世界最大の株式会社。売り上げは約80兆円、従業員は220万人ですから、例えばトヨタやGMと比べても大きい組織です。日本では西友がウォルマートですね。

   この創業者の自伝「私のウォルマート商法」(講談社+α文庫)を読んでいるんですが、これがおもしろい。商人のあるべき姿を実践してきた人なんだろうと、思わされます。そんな話が、日本語の文庫で400ページにもなりますから、読み応えもあります。

   その自伝の最後の章に、成功のための10カ条」というのがあります。その中のいくつかは、経営者が部下や顧客、取引先との間で交わす「カレンシーの交換」そのものでした。
   以下がその各項です。

法則2 「利益をすべて従業員と分かち合いなさい」
金銭による報酬そのものよりも、「パートナーとして遇する」点を強調しているのにうなづきます。

法則3 「パートナーの意欲を引き出しなさい」
様々な刺激を与えること。競争や目標、点数をつけるなど。

法則4「パートナーと情報を共有しなさい」
社内の情報は、取引先企業には常に価値あるもの。思い切って共有しようということです。

法則5「誰かが会社のためになることをしたら、惜しみなく賞賛しなさい」
金銭だけではダメだと言っています。賞賛され感謝されるのが、部下にとっては大事だと。重要なポイントをついています。

法則6 「成功を祝い、失敗の中にユーモアを見つけなさい」
うまくいかないときは、馬鹿げた衣装を着て歌を歌うといい。みんなも歌いだすから。リラックスすることが大事ということですね。

法則7 「すべての従業員の意見に耳を傾けなさい」
組織の末端から責任と改善策をわき上がらせるには、話を聞かなければならないということです。ごもっともです。

法則8 「お客の期待を超えなさい」
そうすれば、お客は戻ってくる。そして問題があっても、言い訳してはいけないと。そんなことをしては、ネガティブカレンシーの応酬になりますからね。

    書いてあることは、あたりまえのことばかり。でもこのまま真似してもうまくいかないことが多いんじゃないでしょうか。ですから、みなさん一様に言われます。「理屈ではわかるけど、うまくいかないね」

   忘れてはならないのは、これらはウォルトンたちの長年の積み重ねのうちに実現したものだということです。小さな交換から、さまざまな交換を繰り返しているうちに、今のように繁栄するようになったんだろう、というのが、本書を読んでの感想です。

2015年2月18日水曜日

外部のリソースを巻き込む

    業界のリーディングカンパニーに勤務する女性リーダーにお話を伺う機会がありました。話してみると、明晰で有能な方という印象です。ふたりの子のお母さんでもあります。
    これまでにも優れた業績を上げてきているのですが、それらの仕事は、幼い子供たちに説明するのが難しい仕事だったので、これからは消費者に直接インパクトのある仕事をして、子供達にも話してあげたいのだと伺いました。今は、新しい分野に挑戦しているとのことですが、その希望をかなえて欲しいと思います。

   気になったのは、新しい分野に挑戦しようとしているのに、社外のリソースを取り込もうとしていないこと。同業、異業種を問わず外部のネットワークが少ないし、関連する学会にも入っていない。仕事と家庭の両輪をまわすのに精一杯なのかもしれません。

   でも、新しい分野に挑むときこそ、異分野の知識と知恵が必要ですから、人材の多様性が求められるものです。社内にはない視点を持つメンバーを、公式、非公式に巻き込めれば、それが彼女の「チーム」です。

   そして、そのような人材を惹きつけられるかどうかは、どんな「カレンシーの交換」を実現するか、にかかっているわけです。

   話を終えた彼女は表情も明るくなり、きっとお子さんたちに誇れる仕事をやり遂げるに違いない、と思いました。