2018年12月12日水曜日

求めること

影響力を発揮できるかどうかは、そもそも求めるもの、求めることが明確であるのが前提です。不明確なときは、影響力もどこかインパクトが弱いままです。

ある会社のマネジャーたちと話していて、多くが部下に何を求めたいのかはっきりしていない。漫然と部下が努力することを要求している。おそらく部下は、何かよく分からなくて混乱している。これでは、上司は部下に地位の力を誇示しているだけ、と言われても仕方ありません。ひどいときは、パワハラになってしまう。

今、ビジネスの環境は厳しさを増しているから、組織はより戦略的でなければなりません。そのなかで、上司は過去の延長線上にない取り組みを、部下に求めているはずです。その方向性が示されなければ、影響力は発揮されない。これは、お客に対しても同じこと。これまでの取引を越えた取り組みを求めるから、影響力が必要なんです。

誰に何を求めますか?

2018年11月29日木曜日

「文句も言うけど、仕事はこなすね」

 昨日の新聞記事です。37歳まで浪人で、妻の失業を機に初めて就職。その後上場企業の役員になったという、シンデレラストーリーならぬ、失礼ながら浪人物語です。

 私が注目したのは、社長から言われたひと言です。

 「おまえは文句も言うけど、やるべき仕事はこなすね」

 「文句」が何を指しているかわからないですが、おそらく「正論」でしょう。この人は正しいことを言うのだと思います。でもいうだけではない。みんながやりたがらない仕事で利益を出すなど、会社との約束を果たしてきた。だから、信頼された。

 会社員のなかには、「正論」はいうけれども、いざというときにやらない人がいる。なかにはそのまま社長になってしまう人もいる。でもこの人は、先入観がない分自由に動き回ってきたのでしょう。

 これは見事な交換だと思いました。


2018年11月21日水曜日

リーダーの不正

 日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏が、東京地検特捜部に逮捕されました。私も自動車業界にいたので、彼のリーダーシップには大いに関心を寄せており、思わぬ結末に驚いています。つい先週も、某所で(久しぶりに)ゴーン氏のリーダーシップについて考察を述べてきたばかりで、私の話の説得力も失われたことでしょう。残念‥

 事実はこれから明るみになると期待しますので言及しませんが、今思うことを少しだけ。それは、ゴーン氏が強欲だといったように彼のパーソナリティに原因を帰属するのは、ちょっと違うなと。

 彼が過去20年間で会社に数兆円の利益をもたらしたリーダーであるという事実は否定できません。会社は販売台数を2倍以上に拡大、売上げも、従業員数も大きく増やしています。彼のリーダーシップのおかげで、ステークホルダーは多くの利益を得られた。労働組合だって数年間満額賃上げを得てきたのです。

 でも私はここに落とし穴があると思います。本人は自分の成果が、ステークホルダーに利益をもたらしてきたと自負しているはずです。多くの関係者に「私はカレンシーを渡してきた」と、おそらく部外者が考える以上に強く感じていたはずです。だとしたら、「私は多くのリターンを得るべきである」と考えるのは自然です。交換の法則が働くからです。そこに、耳元で都合のよいことをささやく“側近”(アメリカ人の代表取締役?)が現れると、良心など簡単に吹っ飛んでしまう。「与えてきたんだから、自由にさせてくれてもいいじゃないか」という奢りがでてくる。

 古典を見ると、成功したリーダーは堕落して死ぬか、国王に殺されるかのどちらかが多いですね。リーダーシップ研究の第一人者ロナルド・ハイフェッツは、リーダーはよいことをしたら、適当なタイミングでその座を降りなければならない、さもなければ殺されると言っています。(今回の場合、社会的に抹殺されるということになるのでしょうか)

 成功自体がリーダーの罠なんだと、あらためて感じます。でも進まなければならない。リーダーシップが旅に喩えられるのは、こういうジレンマにいつも直面するからなのでしょう。

2018年9月11日火曜日

パワハラのネガティブな結末

 先日ある会社のマネジャーたちにインタビューする機会がありました。その会社は決して年功序列、というわけではなく、力があれば若くしてマネジャーになれます。なかなかの人物たちに会えたのは収穫でした。

 ところが、相次いで聞かされた彼らの苦労話には、改めて考えさせられました。それは「年上の錆びついたマネジャー」のことです。業績不振はもちろんのこと、上司に報告・相談しない、勝手に決める、お客の話を聞かない、嘘をつく、など“問題行動”も枚挙にいとまがありません。彼らの仕事が期待を大きく下まわっているので、上司は彼らの仕事を代わってやっている。彼らが帰宅したあとも、上司たちはその仕事をやり直しているというのです。マネジャーたちは疲れ切っていました。

 何が原因でそんなことになっているのでしょう。もちろん長年上司やお客さん任せの仕事をしてきたから、スキルも期待された水準ではないと思います。失敗するぐらいだったらやらない、と考えているようでもあります。そんななかで、上司のパワハラがきっかけになっていたケースがありました。結果が出ないこと、すっぽかしなどを上司から罵倒され続けたというのです。それ以来、心を閉ざすようになったと思う、と深刻に語るマネジャーの話を聞き、私は「ああ、ネガティブなカレンシーの蓄積は、次世代まで続くんだな」と感慨深い思いをしました。やはりそうなんだなって。

 パワハラはネガティブなカレンシーになります。その帳尻を合わせるのには、当事者はネガティブなカレンシーで返すしかない。大きなカレンシーに対してはいつまでもネガティブか、あるいは大きなネガティブカレンシーで返すことになります。前者の場合は、これが末代まで続く(んじゃないか)と思うほど、長く続くこともあります(中東地域の緊張関係は旧約聖書のころから、つまり2000年以上続いています)。

 このケースの場合は、サボタージュや低業績という形で、ネガティブカレンシーを会社に返しているということでしょう。これがあと10年続くと思ったら、マネジャーとしては穏やかではありません。
 会社にとっても悪い影響はおよぶはず。もしパワハラ被害者が大勢いる組織だったらどうなるでしょう。将来にわたって、業績が低下していくのが想像できます。

 パワハラをやめるのは、将来への備えという面もある、そう確信しました。即やめましょう!

2018年9月4日火曜日

ハイチとドミニカ、2つの国の大きな違い

 ジャレド・ダイヤモンド著「ひとつの島はなぜ豊かな国と貧しい国にわかれたか」(2010, 『歴史は実験できるのか』慶應義塾大学出版局2018所収)はおもしろかった。2つの国とはハイチとドミニカです。
 写真を見てください。
左右のどちらに緑が多いか、右でしょう?右がドミニカ、左がハイチです。ご存じのようにハイチは世界最貧国のひとつです(ひとりあたりGDPは820ドル)。国家は水、電気、下水処理、教育といった基本的なサービスを国民に提供できません。東日本大震災の前年、ハイチも大地震に見舞われましたが、政府機関の建物の多くが倒壊したために、未だに復旧ほど遠い状態です。対してドミニカは、まだ発展途上にあるとは言え(ひとりあたりGDPは5900ドル)、ひとりあたりの平均収入はハイチの6倍。アボカドの生産は世界第3位。森林の28%が保存されており、世界で最も自然保護が進んだ国のひとつだそうです。驚きました。野球が盛んでメジャーリーガーを多く輩出しています。
 両国を比較すると、人口はどちらも1000万人強とそれほど違いませんが、ハイチの労働者の数はドミニカの五分の一、車の保有台数も五分の一、高等教育を受けた国民七分の一、医者の数は八分の一、ひとりあたりの医療費は十七分の一、エイズやマラリアの罹患者数はハイチが数倍多いなど、大きな差がついています。
 19世紀まではむしろハイチの方が豊かでした。ハイチがドミニカを支配していたときもあります。ところが、フランス、イギリスの植民地から解放されたあとが異なります。20世紀、どちらの国も独裁者が支配します。ドミニカの支配者は、実は強欲で自分の私腹を肥やすことにしか興味がありませんでした、財産を殖やすためなら、ためならどんな手段でもとります。海外からの助言や投資を拒むこともありませんでした。そのなかに、森林資源を勝手に荒らされないための取り組みもありました。スウェーデンから森林保護の専門家を招いてさえいます。森林資源をコントロールするためです。明らかに自分の利益のため。でもこういうことが結果的にはよかったんですね。ドミニカの国民福祉は世界の平均よりは下回っているかもしれないけれども、最悪ではない。対してハイチの独裁者は、無制限に開発を許してしまいます。それで国土が一面丸坊主になってしまった。結果、洪水は起こる、高潮にやられるなど、大きな自然災害の問題が今でも続いているのだそうです。国民はずっと苦難を強いられています。
 もともとどちらの国も奴隷貿易の中継地点でしたが、ハイチの方が奴隷貿易では稼いでいました。それがハイチの不幸です。宗主国のフランスが撤退したあと、無法地帯になってしまいます。英語やフランス語を話せる人も少ない(独自のクオール語が発展)。そのうえ、植民地時代に何度もヨーロッパ人に騙されてきたという思いがあるために、海外からの投資や助言を受け入れなかった。
 言葉の問題、歴史的な経緯から、海外からの「影響を受けなかった」ことが、結果的に国土を荒廃させ、国民を貧しくしてきたハイチ。現在では産業もなく国際社会での影響力は気の毒なほど弱くなっています。対して私利私欲のためとはいえ、外部からの影響を受けてきたドミニカ。少なくともベースボールの世界では超一流、影響力を獲得してきたようです。両者の関係は200年を経て逆転、さらに拡大しています。
 関係構築にかたくなな姿勢は、結局繁栄にはつながらないようです。興味深いところです。

2018年8月5日日曜日

確認しても変わらない

「クライエントとなんの話をするのですか?」
と伺うと、
「◯◯の確認をします」
という答えが、複数のエンジニアから相次いで帰ってきました。
何人もそういうので、聞き直してしまいました。
「え、確認?」

何を確認するというのでしょうか?
確認するのは、決まったことだけ。決まったことに対してできることは、リソースの提供ぐらいです。使えるカレンシーはごく限られてしまう。
それでは「下請け」的な仕事になるのが避けられないと思います。

影響力を発揮できるのは、相手が望むことに「触れた」ときです。
あなたが相手の望みに耳を傾けた結果、
「あ、この人はわかってくれた。この人と一緒に取り組めば、本当にやりたいことができるかもしれない」
と感じたときに、相手は動くのです。
だから、何を望むのか、とことん腹を割って話したほうがいい。事実、影響力を発揮する人は、そうしています。

せっかく、IoTや自動運転などテクノロジーで世の中を変えるチャンスなんですから。
クライエント側がやりたいこと、達成したいこと、悩んでいることを理解して、
「私に任せてください!それ、ご一緒に実現しましょう」
といったときに、人は動きます。

現場のリーダー、エンジニアのみなさんには、あなたの力で、世の中変えられますよ、頑張って!、とエールを送りたいです。

2018年6月10日日曜日

ちょっとほめる

 ほめられると嬉しいものです。
 今日乗ったタクシーの運転手といくらか話を交わしたあとに尋ねた。
「ところで、運転手さんどこですか?」
どこですか?とは曖昧な質問です。話の流れからすると「どこに住んでますか?」という質問だったのだけれども、50ぐらいと思しき男の運転手は、
「鹿児島です」
と答えました。
「東陽町です」とか「大井町です」という答えを予想していたのに、裏切られました。どこに住んでるか、ではなく、どこの出身か?で答えてきたのです。

鹿児島!
今年の春に初めて訪ねて、とてもいい印象を持った街です。天文台の印象や、桜島の感想など率直に述べました。するとやはり彼は郷土に誇りがある。得意げに説明してくれる。
「ご維新が起こるところだとわかりましたよ」
と言ったら、とても喜んでいました。

そうして、目的地の200mぐらい前で、「支払」のスイッチを入れてくれたのです。(つまり100円ぐらいまけてくれた)

これでお互いに楽しい午後を過ごせたんじゃないかな。。