2017年12月16日土曜日

サプライヤーの影響力

 近年、神戸製鋼、東レ、トーヨーゴム、旭化成、といった日本のすばらしい物づくりの会社が、実は品質データを改ざんしていたことがわかりました。シートベルト最大手のタカタは、エアバックに起因する死亡事故をきっかけに今年破産。20年前自動車メーカーに勤めていたときに、タカタのチャイルドシートが他社の製品に比べて格段に優れていたのに感心したのを思い出すと、残念な気持ちです。

 これらの会社に共通するのは、納入業者であることです。対して完成品をつくっているのは、自動車メーカー、航空機メーカーや不動産会社など。トヨタやホンダ、パークシティなど自社のブランドで売っています。一方、納入業者の製品は、ユーザーからは見えない場所でひっそりと、でも確実に優れた仕事をしてきました。日本のブランド品のみならず、海外の製品、例えばiPhoneやBMWにだって、日本の名も知られていないよく働く部品が組み込まれ、ブランドを支えてきた。そのような優れた部品、部材が日本の物づくりの強みです。

 「影響力の法則」を考えると、私はここにも「影響力の欠如」があっただろうと思います。

 先日あるエレクトロニクス製品メーカーの方と話をしていたときのことでした。その会社は完成品メーカーとある移動体システムを共同開発しています。完成品メーカーが発注者で、エレクトロニクス製品メーカーが協力会社です。このような場合、協力会社は一部分を担うだけ、発注者の指示に従うのみになりがちです。メーカーの方は、結果協力会社側はなにか問題があるとわかっていても、はっきりと言えないというのです。費用の削減をいわれたら反論できない。問題の解決には費用がかかるのに、それを要請できない。やがて大きな問題になるのではないかと心配されていると、その方は打ち明けてくれました。

 これは協力会社からの発注者に対する「影響力の欠如」の問題です。

 協力会社、サプライヤーのメンバーが、問題を知っているのに指摘しないのは、一種の手抜き、エージェント問題です。原因は発注者にだけあるのではなくサプライヤー側にもある。そして責任を取らされてしまうのは、一連の事件の結末のようにサプライヤー側ということになるのです。

 このエレクトロニクス製品メーカーでは、今後問題が発生する懸念から、多くのエンジニアに「影響力の法則」を学ばせようとしていました。

 「今や、現場の専門職に「影響力」は不可欠になっている」。彼らとの出会いであらためて確信しました。

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