2015年11月15日日曜日

派閥をつくろう

 アラン・コーエン&デビッド・ブラッドフォード著「Power Up 責任共有のリーダーシップ」(2010年 税務経理協会)は、チームリーダーシップの古典的な手引きです。上司部下の関係を越えた集団、例えば部門横断的なチームやプロジェクト、地域活動など、様々な目的のために期間限定で集まったチームをどうマネジメントしていくかという点で、多くのリーダーに示唆を与えてきました。

 このなかに、チームの発達段階をマネジメントする、というのがあるのです。チームは、メンバーが集まってきてから、結束して本当に目的のために機能するようになるまで、変化します。最初にメンバーが招集されて顔合わせしたときは、ぎこちない、緊張した雰囲気なのが、打ち解けていきますよね。さらに、メンバーのエネルギーが高まって、目標達成のための高度な協力関係もできてきます。例えば、すばらしいプレイを見せてくれたラグビーの日本代表チームは、ワールドカップの舞台で本物のチームだった、と思いますが、最初はそうではなかったはずです。チームは、発達するのです。
 そこで、一般にはこの発達をタックマンモデルという4段階で示します。「Forming 形成」「Storming 混乱」「Norming 規範」「Performing 遂行」です。メンバーが集められ、意見の違いが表面化し、やがてひとつの方向を向く。そのうえで、結束して力を発揮する、といったプロセスです。でも、「Power Up」では、これに1段階を加えて5段階にしているのです。FormingとStorming(これらの表現は微妙に異なって、Membership 、Conflictです)の間に、第2段階として「Subgrouping」下位集団、まあ“派閥”という段階が加わっているのです。つまり、「チーム発達の5段階」です。

 著者たちによると、多くの集団が対立を避ける。だからなかなか「Conflict 不一致」に至らないままに、表面化しない派閥ができてしまう。実際に、私がプログラムであってきた多くのマネジャーのみなさんが、自分のチームがこの“第2段階”にいる、と答えます。意見の違いをはっきり表明せずに、陰で不満を言っているようなケースが多いということです。ちょっとおもしろいのは、アメリカでもそういうチームが多いということです。彼らは言いたいことをはっきり言いそうなものですが・・・。それでも、本当の問題はなかなか話されない。日本の組織では、なお難しいのかもしれません。「うちのメンバーは意見を言わない」「一部の声の大きいメンバーが牛耳っている」などと聞きますから。

 それで、この2段階を乗り越えるのが課題だ、ということになるのですが、最近、私はこの第2段階がとても大きな意味を持っていると感じています。なぜか。

 Subgroupサブグループは、意見が近い、立場が近い、出身が近い(笑)人たちからできてきます。そうして、何人かのサブグループができてくると、その中では、話が活発に交わされ、意見やアイデアが飛び交うようになります。サブグループの中が活性化して、ある観点からの問題洞察が深まり、アイデアやエネルギーがわいてくる。そんな話を、ひょっとしたら駅前の居酒屋でやっているのかもしれないけれども、そのような活性化、いいことじゃないですか!
 サブグループに入れないと孤独です。話し相手もあまりいない(笑)。話さないから、問題認識が深まらない。仲間の群れに入れないと、多くの動物は生きていけないそうですね。百獣の王ライオンの雄でも、群れを作れないと獲物を捕らえることもできない。多くは死んでしまうと聞いたことがあります。どんなに優秀な人でも、一人では力を存分に発揮できないでしょう。だから仲間が必要です。それを、仲間割れはよくない、派閥はだめだ、といって、派閥ができることを目の敵にしていたら、いつまでたっても発言しない、できない若者を抱えることになるのではありませんか。

 若い人には、派閥をつくってしまえ、ということにしました。よい志のあるところなら、そんな派閥に入ってもいい。そうして、力を発揮できる場、声を上げる場を作ろうと。そんな派閥を使って、自分の力をチームや組織全体におよぼせるようにしてみようと。

 もちろん、自分のサブグループの論理に甘んじていてはいけません。組織にとっての最善、社会の利益を考えなければ。でも、サブグループがあるからこその利点を買った方がいい、というのが私が最近、現場のマネジャーの嘆きを聴きながら思うところです。
(この写真は、本文と全く関係がありません。
コロラドの町からロッキーを見上げたらそこにあった雲。
おもしろい形でしょう?)

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