先日、面白い方がいました。この方は、ある素晴らしい会社の立派な管理職の方なのですが、私が話を始めて間もなく、私の髪型が気に入らないというのです。みんなの前で、寝癖じゃないか、というわけです。こういうストレートな表現は珍しいですね。若いときはあったような気がしますが、今世紀に入って初めて経験したような気がします。
カチン、ときました。失礼な!一瞬だと思いますが、セルフトークが頭の中を駆け巡ります。「なんだ、この物言いは!」「私がこんなことを言われる筋合いはない」「彼はここに来る資格はない」「ここでは私がすべてを決められる」「このような失礼な人は、部下や同僚から好かれていないはずだ!」「退席しろと言ってやろうか」。
でも、問題の髪を撫でながら、少し落ち着いてきました。頭にくる理由があるのです。にわかに髪が薄くなってきて、髪のことに触れられたくない。その髪のことを指摘されたわけです。正直言って痛い!痛いところをつかれたのが、私が怒る理由だったのです。理由がわかると、少し落ちつきます。落ち着くと、まわりが心配しているのを感じました。他の参加者は、彼の発言に同意していないか、私に同情している。私には味方がいる、と感じた途端、もう一段落ち着きました。そして、このネガティブカレンシーをそのまま返さない(つまり怒ったり、嫌味を返したりせずに)で、腹に収めることにしたのです。
すると彼は、次にこう言いました。「小さなことが気になるぐらい、ものすごく緊張しているんですよ」。
なんという正直で、率直な表現でしょう!こんなに率直に話せるのは、少年の心を持った人に違いない!その時から、彼の参加態度は変わりました。前向きに取り組んで、ご自身の課題を見つけて、多くを学んで職場に帰らったのです。
斜に構えている人、失礼な人の多くは、緊張している、不安である、他に心配なことがある、など、落ち着いていられない事情を抱えていることが多いものです。グレた少年少女が、家庭や人間関係の問題を抱えている(ことが多い)のと同じです。そういう人は、本人はそれとは認識していないのだけれども、ネガティブなカレンシーを振りまいている。そうして、みんなに警戒されたり、嫌われたりしているんですね。ご自身の気持ちに振り回されて、何しているかわからなくなっているだけ、のことがあるのです。自分の気持ちの問題に気づければ、この人のように前に進めることもあります。
みなさんのまわりの厄介な人も、他に気になることがあるか、緊張しているだけ、なのかもしれませんよ。
私にとって良かったのは、斜に構えた管理職の失礼な発言にキレてしまわなかったことです。怒ってしまったら、今度は私がネガティブなカレンシーをぶちまけてしまい、そのあとの研修は、惨憺たるものになったでしょうから。
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