2014年4月2日水曜日

価値観を優先するか、結果を優先するか

必要なのは相手から協力を引き出す働きかけであって、自分が価値観を置くものを相手に押しつけることではない。自分の価値観や信念を貫き通すのか、それとも相手を動かすのか。(『影響力の法則〜現代社会を生き抜くバイブル』2005 デビッド・ブラッドフォード&アラン・コーエン 税務経理協会  p130)

    先日、あるメーカーの研究開発部門のマネジャーと、お話ししました。最近は海外の子会社や協力会社と協業で、開発プロジェクトを進めることが多くなっているそうです。それだけ、製品は複雑さを増し、顧客の要求は厳しく、それにもかかわらず組織は身軽になっているのでしょう。社外の能力に依存せざるをえません。

    その彼が、アメリカの子会社のマネジャーと一緒にやっていく難しさについて、話してくれました。彼らは彼らの見解や提案を強力に主張してくる。それで、こちらは言葉を挟む間もないと。そうこうしているうちに、先方の主張が通ってしまい、日本に不利な条件になってしまうと言うのです。
    この話をしてくれた日本のマネジャーは、疲れた様子で、彼らとの会議は気が重い、と言っていました。アメリカのエリートたちは、自分の主張を決して翻さない。彼らは頑固だ。ここで良い成果を上げたら、他社により良い条件で採用されるので、結果を出すことしか考えていない。だから、こちらの主張が通らないのは仕方ないし、どうしようもない。でも、彼らがやっていることは間違っている、と言うのです。

    私には、彼が苦労しているのがよく感じられました。同時にこれは品質上の問題になるんじゃないか、市場に受け入れられず失敗するだろう、と心配になりました。こんなことをくりかえしているのかもしれないな、それでは、会社の業績にも悪い影響が出るなあ。

   ここには、二つの問題があると思います。まず、アメリカ側のマネジャーが日本の状況を理解しようとせず、彼らの主張を押し付けるため、彼らの日本に対する影響力が発揮されていない点。日本側は抵抗しているので、積極的な関与を引き出せずにいます。日本は「仕方ないからやるか。でもうまくいくはずがない」という感じです。
    もう一つの問題は、日本側が「アメリカの連中は自分のことしか考えていない。それは会社員として間違っている。」と考えていること。日本のマネジャーは、一見なにも主張していませんが、心の中では会社では同僚の話を聞き同調すべきだと叫び、自分とは異なる考えを誤りと決めつけています。なぜ、彼らが頑なになっているのか理解しようとせず、個人の問題(自分の利益しか考えない)としている。つまり、自分の価値観を相手に押し付けている点で、アメリカのマネジャーと実はそう変わらないのです。

    こちらの目標は、相手がこちらの意見に耳を傾け、双方が歩み寄れる解決策を導き出すことでしょう。そう考えたら、こちらにできることは、相手が主張する本当の理由を理解しようと努め、一方でこちらが言わなければならないことを、相手にきちんと主張することです。相手が声高に主張するようなとき、多くの場合、こちらも相手を理解していません。こちらが相手を理解するようにすれば、レシプロシティが働き相手も歩み寄る可能性が出てくる。少なくとも、諦めているよりは、良い結果になるはずです。

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