2015年8月28日金曜日

顧客の声

 京都に出張するといつも使うホテル。全国チェーンのビジネスホテルです。この八条口のホテル、気に入っています。

 というのは、最近いい部屋を用意してくれるのです。上階だとか広い部屋だとか、アップグレードしてくれる。部屋が快適だと気分はいいし、仕事もはかどります。でも、なぜかな。

 実は、一つ心当たりがあります。

 それは、数ヶ月前にこのホテルに宿泊した際、とても対応が良かった。それを、「お客様の声 支配人あて」(よく客室に備えられている調査用紙です)に書いて、チェックアウト時にフロントに提出したのです。「いい対応だった。また泊まりたい」と。それが効いているのかもしれません。

 だとしたら、楽しい「交換」だなと思って、ちょっと愉快な気分で過ごしました。

掃除道

 自動車用品販売「イエローハット」の創業者、鍵山秀三郎氏は、独自の清掃活動でも知られています。

 その鍵山氏の講演録『凡事徹底』(1994 致知出版)に、こんなエピソードがありました。

 毎日、会社とその周辺を箒と塵取りで掃除していた。そのうち、望んでいたわけではないのだが、お礼の品が届くようになった。都心の一等地のビルは、そうしてある方から譲り受けたものだ。

 すごい“交換”ですよね!

2015年8月18日火曜日

アドバイスを求める

 最近自転車に乗り始めています。20年ぶりぐらいでしょうか。まだ新しい自転車にも慣れるのに精一杯ですが、風を切る爽快感は格別ですね。

 私がお世話になっている自転車店の若い店主は、なかなか魅力的な若者です。彼に後押しされて始めたところも多分にあります。

 その彼に、「今度社用車を買おうと思っている。タカシマさんは自動車業界だから(正しくは元)よく知ってるでしょう、お勧めはないですか?」と尋ねられました。

 ほう、この店もクルマを持つんだ。自転車ライフを提案する店だから、ライフスタイルを想像できるようなクルマがいいんじゃないかなと思い、いくつかアイデアを伝えました。

 これが実はなかなか楽しい。私は元業界人だから、この分野はちょっと得意としています。自動車販売員の商品知識教育を担当していたので、他者の製品も含めていろいろ調べました。それ以来クルマの情報は蓄えられています。その得意分野が活きるのです。加えて、新しい店の発展に、客としてちょっとは貢献できるような気がする。

 彼も真剣に聞いてくれて、参考になりました、と別れた後は、自転車漕ぎながら少しいい気分になりました。相談されたことが、私にはカレンシーになったようです。
 
 相手が得意な話は聞いてみる。それで、参画意識も感じられるかもしれない。

 あなたも、部下や上司、友人に、彼らが得意とする何かを聞いてみたらいかがですか?


2015年8月15日土曜日

ならぬ堪忍、するが堪忍

 京都の心学修正舎は、石田梅岩の弟子、手島堵庵以来の心学講社です。この講社では、毎月1回石門心学を学ぶ会「会輔」が行われており、名門商家の京町屋で開催される会輔に、私もこの春からときどき参加しています。

 初めて参加した時、講師の後藤一成先生が「あれを見てください。「堪忍」と書いてある」という先を見ると、鴨居に額があり「堪忍」とあります。
  「これは、商家がお客に『どうかそれ以上は無理を言わないでください。堪忍』、という意味で掲げています。だからお客の方を向いている。これが京都らしいものなんですよ。面白いでしょう」と言われる。
 これが、東京や大阪だと、お客に何を言われても我慢しよう、と自分の方に「堪忍」を向けて自分に言い聞かせるだろう、とおっしゃるのです。確かにそうかもしれません。東京人が、ひとり脂汗を流しながら、相手の無理難題に我慢する姿が思い浮かびます。京都では、我慢しないのでしょうか。おもしろい。だとしたら、相手に堪忍を求めるのは、長く取引を続ける上で、重要な商人の知恵だったに違いありません。

 「ならぬ堪忍、するが堪忍」は石門心学を広めた江戸中期の心学者、中沢道二の言葉です。堪忍とは困難を堪え忍ぶこと。「ならぬ堪忍、するが堪忍」には、本当に堪えられないと思うことを堪忍するのが、本当の堪忍ですよ、という意味があります。

 これを、「カレンシーの交換」で考えてみると、こちらもギリギリだけど、相手も苦しい。だから、最後のところで相手を追い詰めてはいけない。堪忍してやって、相手に逃げ道を残すことが、カレンシーとなる、ということです。相手は、逃がしてくれたと思うからです。その結果、取引(交換)の継続になる。一般的には、相手はなにか駆け引きをしているのではないか、と疑心暗鬼になりがちなのを、堪忍が働いていると認識することで乗り越えているようです。

 おそらく、京都の商人には、「お互いにギリギリまで努力している、そのうえで最後は堪忍してくれる」という暗黙のルールがあって、その信頼関係を取引の基盤にしてきたのでしょう。

 「堪忍」は、それ自体が「カレンシー」として機能しているのですね。
 今日は、終戦記念日。堪忍による平和と繁栄を思いました。