2018年11月21日水曜日

リーダーの不正

 日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏が、東京地検特捜部に逮捕されました。私も自動車業界にいたので、彼のリーダーシップには大いに関心を寄せており、思わぬ結末に驚いています。つい先週も、某所で(久しぶりに)ゴーン氏のリーダーシップについて考察を述べてきたばかりで、私の話の説得力も失われたことでしょう。残念‥

 事実はこれから明るみになると期待しますので言及しませんが、今思うことを少しだけ。それは、ゴーン氏が強欲だといったように彼のパーソナリティに原因を帰属するのは、ちょっと違うなと。

 彼が過去20年間で会社に数兆円の利益をもたらしたリーダーであるという事実は否定できません。会社は販売台数を2倍以上に拡大、売上げも、従業員数も大きく増やしています。彼のリーダーシップのおかげで、ステークホルダーは多くの利益を得られた。労働組合だって数年間満額賃上げを得てきたのです。

 でも私はここに落とし穴があると思います。本人は自分の成果が、ステークホルダーに利益をもたらしてきたと自負しているはずです。多くの関係者に「私はカレンシーを渡してきた」と、おそらく部外者が考える以上に強く感じていたはずです。だとしたら、「私は多くのリターンを得るべきである」と考えるのは自然です。交換の法則が働くからです。そこに、耳元で都合のよいことをささやく“側近”(アメリカ人の代表取締役?)が現れると、良心など簡単に吹っ飛んでしまう。「与えてきたんだから、自由にさせてくれてもいいじゃないか」という奢りがでてくる。

 古典を見ると、成功したリーダーは堕落して死ぬか、国王に殺されるかのどちらかが多いですね。リーダーシップ研究の第一人者ロナルド・ハイフェッツは、リーダーはよいことをしたら、適当なタイミングでその座を降りなければならない、さもなければ殺されると言っています。(今回の場合、社会的に抹殺されるということになるのでしょうか)

 成功自体がリーダーの罠なんだと、あらためて感じます。でも進まなければならない。リーダーシップが旅に喩えられるのは、こういうジレンマにいつも直面するからなのでしょう。

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