2013年6月18日火曜日

よい結果を求めるほうが影響力は高まる

自分がすべきことではないという理由で、相手が協力しやすい方法を使うのを嫌がり、自らの影響力を損なう人がいる。彼らの考えではこうだ。「同僚が動くのは、私の依頼内容が正しいという理由で動くのでなければならない。私から相手を動かそうとすべきではない」(コーエン&ブラッドフォード『影響力の法則 現代組織を生き抜くバイブル』税務経理協会p77)

    ある人事部門のマネジャーの方で、自分のサービスが正しいのだから、従業員は私の指示に従うべきだ、という強い信念を持っている方がいました。彼は、自分のデスクから決して動こうとせず、せっせと部下や現場に指示を出していました。しかし、いずれの施策も効果を上げられません。彼の態度が尊大であると現場で嫌われていたのです。それに気づかず、彼はいつも苛立っていました。
    以前はこういう方が管理部門にはしばしば見受けられました。最近は、管理部門の役割が変わってきており、このようなマネジャーは減ったかもしれません。でも、自分の方が相手よりも上だと考えると、似たような態度をとる人はまだまだ多く見られます。例えば、上司や専門家には、少なからず見かけます。

    本当に求められているのは必要な結果を出すことなのか、自分の正しさの証明なのか、よく考えなければいけません。答えは明らかで、目標を果たし求める結果を出すことです。結果を出すためなら先に動くこと、カレンシーの交換をこちらから仕掛けるのが、結局近道というわけです。

2013年6月10日月曜日

メンバーはリーダーの心を読もうとする

コミュニケーションは常に複雑である。しかも、権限と階層がかかわると、一層誤解しやすくなる。(中略)この経験を積むと、上司の言葉に先入観を抱くようになる。そして、気軽な上司の提案を命令と誤解したり、たいした意味のない仕草から期待を読み取ろうとしてしまうのだ。(コーエン&ブラッドフォード『Power Up 責任共有のリーダーシップ』税務経理協会p176)


   リーダーのささいな一言が、メンバーには気になり、過剰反応することもしばしばあるでしょう。そうして、リーダーは知らず知らずのうちに部下に無駄な時間とエネルギーを消費させてしまうのです。
   新しい郊外のオフィスを視察した幹部が、「ここにヤシの木でもあったら、最高の景色だね」と口にしました。本人は軽い気持ちで言ったのですが、次に来たときは本当にヤシの木の並木になっていた。本書にこんな笑い話があります。他人ごとじゃないですよねえ。
   では、リーダーが言葉に気をつければよいか、というとそういう問題ではないと思います。メンバー側の「リーダーの顔色をうかがっていらないことまで反応してしまう」ということのほうが問題です。そんな彼らは、決まって言うのです。「でも、部長はいいといったじゃないですか」と。

   メンバーの主体性、判断力、責任感を育てない限り、リーダーは苦しむでしょう。そして、組織の力は十分に発揮できない状態が続いていくわけです。

2013年6月9日日曜日

伝統工芸的組織

   先日、ある自動車メーカーの汎用エンジンの開発技術者の方とお話しました。汎用エンジンというのは、モーターボートの動力や発電機などを指します。こういうエンジニアの方とお話するのは楽しい。製品に対する思い入れが感じられるからです。

   市場の動向など、いくらか会話を交わしたあと、「製品開発のプロジェクトは大変じゃありませんか?」と尋ねてみました。すると、この人は何を聞くんだろう、という表情。そこで「いえ、プロジェクトにはいろいろな部門から、様々なバックグラウンドの人達が入ってくるので、すり合わせが大変だと言いますよね」と付け加えると、その若いエンジニアは、私の質問の意味がわかったらしく笑いながら「それは、4輪は大変ですよ」と答えてくれました。「4輪(乗用車)は、何百人も関わりますからね、会社の経営に大きな影響を及ぼします。みんな大変だって言ってますねえ」という。「でも、私がやっている仕事は、もっと簡単なんですよ。モデルチェンジのサイクルが長いし、競合も少ないし。そのうえ、同じメンバー数人で何年もやっていて、お互い気心知れていますから、ずっとラクなんですよ」

   確かに、変化が少なく比較的単純なプロジェクトでは、経験者のほうが業界、技術のことをよく知っています。ですから、リーダー→メンバーの上意下達で多くの状況を動かすことができ、チームとしての機能はそれほど必要ないと言われています。典型的な例は、伝統工芸や伝統芸能です。師匠の仕事を再現するのが弟子の役目です。
   一方、複雑な製品を開発している、変化が早い市場を相手にしている、競争が厳しい、といった条件下では、リーダーはメンバーの技術、情報、コミットメントに頼らなければなりません。自動車開発のプロジェクトリーダーのほとんどが40代で機械工学専攻、メンバーの多くはエレクトロニクス専攻なのが一例です。自動車に興味が無い若者もメンバーに紛れ込んでいますが、彼らの能力が発揮されないと、自動車のような3万点と言われる膨大な部品からなりたつ製品は完成しません。このような条件下では、チームリーダーシップなくして事業は成り立ちません。

   さて、自分が関わる事業は、比較的単純な製品を扱う、競合が厳しくなく変化が少ないか、あるいは、製品が高度に進化している、競合が厳しい、変化が激しいなどが見られるか。多くの事業は、伝統工芸ではいられないと思うのですが、いかがでしょうか。