2018年3月5日月曜日

ドクターXと影響力(2)

    プロデューサーの仕事ぶりに感心したというのが前回のお話。いよいよドラマを観るとやはり次に注意が行くのは、主人公の影響力です。「医師免許とたたき上げのスキルが彼女の武器だ」というナレーションの通り、主人公大門未知子は他を圧倒する外科手術のスキルでやりたい仕事をことごとくものにしている。やりたい仕事は、その人の持つスキルと交換でゲットするという、まああたりまえの話ですが。

    ただ、彼女は大金に興味がなく、金よりも難しい仕事を求める。その素振りは難しい仕事に取り組むことが目的になっているように、まわりから思われるのですが、実際は当の本人は患者のことだけを考えている。それに気づいた同僚の中から彼女の味方が現れるのも面白いところです。伊東四朗演じる元上司が、「大門を見ていて自分が医者だということを思い出す」と言っています。その仕事ぶりから、院内政治に明け暮れていた院長のプロフェッショナルとしての大義を呼び起こしている。これは大きいカレンシーです。だから、かつての上司たちが、たとえ疎ましく思っても彼女を手術に呼びたがるのはわかります。

    まあ、そういういことを口で表現しないから、仲間に誤解されコンフリクトを起こすんですけどね。では、言葉で表現すればいいかというと、どうか…。孔子は言っています、「巧言令色少なし仁」って。美人でも三枚目で、手術以外は何もできない、というのが、ファンタジーの主人公としてはちょうどいいんでしょう。やり過ぎれば、ネガティブ・カレンシーになってしまうから。